ぱきっと冬晴れの週末の大気は静かで、ときおり布団をはたく音がどこか地上高くのベランダからすんと舞い込む。それと冷蔵庫の唸り声はいま、だいたい耳の高さだ。
昨日は日中ずっと身体が鈍く眠くて、陽が落ちてから机に枕を乗せて少し寝た。目が覚めたあと、数分の空白が結局、日々の生活のなかで一番幸福だ。頭の中が水平線まですっと素直に空白。起床して、外から何かの刺激があるたび、その空き地を覆う毛が一斉にぶわっと逆立ってこちらを向き、あちらを向き、折れ重なり絡まり合って、どんよりと濁っていく。この濁りが意識と呼ばれる。
中学、あるいはひょっとすると高校までの私にはずっと意識がなくて、ずっと清潔だった。こうして意識をもってしまった今から当時を振り返ってその善し悪しを云々することは出来ないけれど、そうして今から振り返られるその限りでそれはなんと幸福な過去だろう。微睡みの幸福、それはいつも覚醒のあと、喪失のあとに来て、ようやくはじめてそれは私に幸福だった。
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