2020年12月7日月曜日

20201207 オリオン、ササミ

10:00 現在、コーヒーはすでに一杯。エチオピア・イルガチェフェの、まあ多分ウォッシュ。イオン傘下の豆と輸入食品の店の、明らかに回転の悪そうな安価な量り売りだったので、正直どんなものかとこれまでスルーしてきたけれど、実際鮮度は今ひとつとはいえ、期待よりはずっっとよかった。イルガチェフェらしさを予感させる枯れ草の風味。

昨日も息を殺して過ごした気がするけれど。夜、買い出しに出て、相変わらずマスクに眼鏡が曇らされて視界は狭く霞んだ夜道で、人通りは不思議と少なかった、そのわりに店内は着膨れの買物客で妙にごった返していて、蛍光灯の白い灯りの下でまるで蛾だ。しかも皆カゴを一つ二つと一杯にしている。もう年末だったっけと訝しむも、どう考えてもやはりまだ12月もやっと前半だ。

帰り道にたまらずマスクを外すと冷気がガラガラと脳の奥の方を刺す。東の空に路地の幅いっぱいにあれはオリオン座だ。星座は全く知らないのだが、不思議とオリオン座だけはすぐにわかる。等間隔に横並びになった星三つを中心に、その上下に砂時計状に広がる両の半身。

生きている限り、これが見えなくなることはありえないだろう。それほどまでに深く、私は人類史の中の微小な一点として定義されている。あるひとつの点がその片面で光点の布置を、片面で人類史を、それぞれ反映し、その交わりにおいてこの私が、このオリオン座が定義される。互いが互いの対応物として。すでにそれらは傷跡だ。

帰宅して本を読んで寝て起きて朝食にはパンと目玉焼きと、ササミの茹で汁で人参とキャベツを煮たスープ。ササミの筋を取るのは苦手だ。実をいうと、ササミは人間の食用に生まれたものではないし、筋も除去されるべくそこに埋まっているのではない。あるいは全く逆に、そうであるのだとも言える。この肉を我が肉と思ってその筋を取り除け、という。なんだか裏からも表からも深く埋もれて見えるこのササミの筋だ。筋の気持ちになって、その身に寄り添うように包丁を滑らせて肉から切り離す。とはいえ入れ込みすぎると筋そのものを切ってしまうので程々に醒めた調子で、素知らぬ顔で。剃刀を入れるのもまた、この皮膚の "私でない側" を確認する儀式だ。さてこの出来物はどう扱うか。入れ込み具合に気を付けて。

借りてきた指のようだという。とび縄が半ズボンの脚をピシャリと打つ冬の大気だ。12月は7日。曇り窓越しにおそらく快晴。



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