2020年12月15日火曜日

20201215 良い夜を持っている

8:00 現在、コーヒーは一杯。コスタリカのイエロー・ハニー。ウインナーを焼いたようなむっちりと存在感ある香り。しっかりした甘味、次いでそれは保ったままわずかに遅れて、青リンゴの汁を啜ったような酸味がそこに重なる。


目をぐっと真冬のそれへと引き込む寒い朝だ。コーヒー・ミルもiPhone も黒く冷たく指を竦ませる。床が内側にぐっと縮み込んでしまったように足の裏に疎だ。


昨夜はGoogle のサービス全般に大規模な障害があったらしい。その時私はたまたまYouTube の生況信を観ていたのだが、画面に流れるコメントによるならば、まずは新規にその配信にアクセスすることが出来なくなって、次いでそれまでの視聴者も次々に振り落とされていったらしい。他の多くの配信も延期や中断を強いられていた中、なぜかその配信はなんとかそれでも続いていたのもあって、配信は投稿者、コメントともども静かな興奮に包まれていた。内容がMinecraft の実況配信だったのもあって、影Mod を入れた黄昏の空はとても綺麗で、「まるで世界に私たちだけみたいだね」みたいなコメントが飛び交っていた。

また別の人はアカウントを強制ログアウトされてしまい配信を閉じるに閉じれなくなっていて、なす術もなく口数も少なに、ただLive2D の目の瞬きだけが暗い背景の中で艶やかで、昔はもう少しだけよく出くわした、停電の夜の心細さと少しの興奮はきっとこのような色だったと思う。もう長いことご無沙汰だった、良い夜を味わったような気がする。


良いSFの多くはもしかすると、良い夜の匂いがする。それは『DEATH STRANDING』の対消滅だ。『Blade Runner 2049』の大停電と誕生日ケーキのキャンドルだ。円城塔「良い夜を持っている」の忘却だ。人類の可能性を煌々と照らし出すほどに、その底に一層暗く沈みこむ闇の気配が立ち込めている。ここは孤島だ。星は明るく、足元には黒く海。




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