11:00現在、コーヒーは1杯、今日は新しく開封した、インドのカラディカン農園、ナチュラル。存在感の強いスパイス感のせいか、一瞬、水に溶いたココアのようなざらりとした質感を錯覚するが、それは口腔にまとわりつくことなく、赤ワインのような挙動で流れていく。後味にダークチョコレート。冷めるにつれて徐々に口蓋に漂うレモンのような風味、時折閃くようにあんずバーのような酸味が感じられる。
国内に抱える紅茶の特産地の名の数々の陰に霞んでか、コーヒーの産地としてのイメージがあまりない(ような気がする)インドだが、実のところ常に世界のコーヒー生産量の上位に食い込む一大コーヒー大国であり、しかもその大部分をカルナータカ州、ケーララ州、タミルナードゥ州からなるインド最南端3州が占めている。
その3巨頭の中で断とつであるカルナータカ州のチクマガルールは、伝承によれば、コーヒー豆がインドに伝わった初めての地であり、なんでも16世紀だか17世紀だか、僧侶ババ・ブーダンがイエメンから秘密裏に、遠路はるばる7粒のコーヒー豆を持ち帰ったのだという。
真偽はともかく、この地はインド亜大陸の西海岸を縁取る西ガーツ山脈に位置する高地であり、コーヒーの産地として適していたことは事実であって、案の定後年大英帝国がこのあたり一帯でコーヒーの大規模なプランテーションを始めることになる(マイソール・コーヒー)。ちなみにチクマガルールから山脈を辿ってもう少し南に降ったところには紅茶の産地として名高いニルギリ丘陵が広がっており、そこを走るニルギリ山岳鉄道の名もまた有名だ。
というか正直なところ、私の中での順番は逆向きだった。
最初に知ったのは「ニルギリ」という名詞、それは作詞:抱きしめたトゥナイト、作曲:ハチ(言うまでもなく、後の米津玄師)による短い歌のタイトルであって、また私がそれを初めて聞いたのは、今はすでに引退しているVTuber久遠千歳のカバー曲でのことだ、彼女は死ねないのであって、その曲には谷に落ちていく汽車が登場する。
その曲を知って少したったころ、近所のイオンの値下げコーナーにニルギリの茶葉を見つけた。450円+税で買って帰った。
コーヒーの方はそれらとは全く別ルートで知ったことだが、それらは机の上に開いた地図帳の見開きの上で隣り合っている。
昨晩は1時間くらい音読をした。たまたまkindleに入れてあった三方行成『トランスヒューマンガンマバースト童話集』収録「地球灰かぶり姫」。「継母」と「シンデレラ」という頻出語がとにかく舌が回らず最後の頃にはへろへろになりながらの一時。死のうだなんて馬鹿馬鹿しいとばかりに地を覆い尽くす灰を踏み散らして幸せなシンデレラ。ガンマ線バーストにも負けないくらいのずっと、ずっとの愛のおはなし。
参考
https://dailycoffeenews.com/2018/10/02/coffee-in-india-a-complex-history-and-a-promising-future/
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