2019年6月18日火曜日

*この期に及んで夏休み日記:その3* IKEA Tokyo-Bay でふりかえる東京インディペンデント2019

IKEA Tokyo-Bay に行ってきた。

立川店以外のIKEAは初めてな私は、入口ホールでいきなり衝撃を受けることになる。

店内に入ってすぐのところに、売り場の平面図がはっきりと掲示されている。これはIKEA立川にはないものだ。




ここでIKEAでの作法をご存じない方向けに説明しておくと、IKEAの店内は大きく3つに別れている。主に大型の家具類が並び、実際に試すことができる「ショールーム」、小物類が陳列された「マーケットホール」、そしてショールームで試して気に入った商品をピックアップしてレジへとはこぶ「セルフサービスエリア」だ。

商品が種類ごとに分類され、整然と並んだ巨大な倉庫である「セルフサービスエリア」とは違って、「ショールーム」と「マーケットホール」には無数の商品の間を縫うように巡らされた順路が設定されており、基本的には客はそれに従ってすべての売り場を巡りながら買い物を進めることになる。

さて、この平面図の存在がなぜそんなに大ごとなのかだが、今年の春に開催された「東京インディペンデント2019」に私が出品したもののうち一点、「展示会場のプラン IKEA立川の地図」が、まさしくIKEA立川店のショールームの平面図として作られたものだからだ。

良い機会なので、この場を有効活用して「東京インディペンデント2019」について簡単に振り返っておこうと思う。

同展は今年2019年の4月18日から5月5日にかけて東京芸術大学の陳列館で開催された、その名の通りいわゆるアンデパンダン展であるので、当然申し込みさえすれば身分を問わず誰でも出品することができ、出品者は最終的に634名に登ったらしい。

今回私が出品したのは以下の三点である。

・「半自立絵画のプラン」
・「自立絵画のプラン」
・「展示会場のプラン IKEA立川の地図」

・「半自立絵画のプラン」



まず「半自立絵画のプラン」だが、外観としては看板、それも恒久的なものではなく、しばしば街中の電柱やガードレールなどに無許可で設置され、そのまま強制撤去されるのを待っているような使い捨てのもの、いわゆる「ステ看板」というやつである。いかにも貧弱そうな角材をタッカーで荒っぽく組んだ木枠に、本来は広告が印刷されたビニルシート等が張ってあるのだが、これは代わりにキャンバスを張ってある。

ちなみにこの木枠は実際にステ看板を作っている業者さんに発注したもので(本体よりも送料がとにかく高くついた)、キャンバスは世界堂で買ってきたもの(めっちゃ高かった)を自分で張った。

その構成要素という点で油絵でしばしば使われる木枠キャンバスと大枠は共通していながら、権威とは無縁のその扱い、そして何より自らの脚で「半自立」する姿に昔から興味をひかれていた。

・「自立絵画のプラン」


半自立があるなら自立もないといけないだろうと作ったのが、次の「自立絵画のプラン」だ。IKEAで買ってきたフォトフレームを、包装だけ解いてある(後ろの脚が出せるように)。それだけだ。

ちなみに少し大事な点として、フォトフレームはそれが商品であるうちは大抵、本来写真を(すなわち作品を)収める部分に商品名やサイズ等が印刷された紙切れが(すなわちキャプションが)封入されている。さらにIKEAの商品の場合、そこに使用例として写真を収めたフォトフレームそれ自体の写真が刷られており、結果として画中画(mise en abyme=深淵にする)のようになることになる。


・「展示会場のプラン IKEA立川の地図」



最後に「展示会場のプラン IKEA立川の地図」。IKEA立川の「ショールーム」の平面図を歩測によって推測し、その結果をIKEA店内に備え付けてある紙メジャーに写し取ったものだ。美観と保管の観点から、やはりIKEAの商品であるディスプレイフレームに封入してある。

これはもとはIKEAの順路式の売り場設計が美術館の展示空間のそれとよく似ているな、という考えがもとになっている。物語りと足取りの継起性の結果としてのシーケンシャル・アクセシビリティと任意の一作品に効率的にたどり着くためのランダム・アクセシビリティの要請とを両立するための、つづら折りのあちこちを抜け穴で繋いだ空間設計。

先述の通り、IKEA立川の場合、売り場の平面図は店内に一切掲示されておらず、あるのはただ駅の停車駅表示版のような、数直線化された行程図のみである。IKEAはそういうものという認識のもとで作られたのがこのプランなので、船橋で入店するが早いかすでに出来上がった平面図を見せられたときには正直少し裏切られた気さえした。これが驚きの原因である。



さて、これら三点の関係だが、まず名前的には「半自立」と「自立」があからさまに兄弟である。しかし外観的には「自立」と「地図」がIKEA製品つながりで類似し、また手間数としては、ほとんどレディメイド同然の「自立」との対比で「半自立」と「地図」とが浮き上がり、偶然とは言え程よく三すくみ状態になっている。

また三点のいずれも「プラン」として統一しているのは、言うまでもなく「平らな面 planus −案 plan −平面図 plan −無垢 plain」といった親族関係を意識してのものだ。

「プラン」などと呼んでいることからもわかるとは思うが、これらは美術作品として出品したものではない。あくまでも展示の形を巡る試案という扱いだ(いちおう「作品」のような危うい語を使うのは避けるようにしている)。

パレルゴン(par-ergon 作品の−傍ら)を巡る一発ギャグ三連発といった理解で一向にかまわない。



参考リンク

「イケアストアでのお買い物方法」
https://www.ikea.com/ms/ja_JP/customer-service/about-shopping/how-to-shop-at-ikea/index.html

「東京インディペンデント2019」公式ページ
https://www.tokyoindependent.info/

買ってください
https://twitter.com/10aka_/status/1125373972743200769

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